僕とおじいちゃんと魔法の塔D




『魔法の塔』に関しては、担当さんといつも「今度は何にする?」と話し合うことになっている。

ファッションビルの最上階でイタリアンを食べながら話し合った時、私は「晶子といじめをからめたいと思ってたんですよね」と言ったが、その時すでに発売されていた、羽海野チカさんの『三月のライオン』で、女子中学生といじめが描かれていた。このままでは、カブってしまう。

じゃあ、どうしようと考えた時、「晶子と恋愛はどうだろう?」と思いついた。まだ中学生だから、ピュアピュアな感じで、でも龍神たちはオロオロする感じで。 そしたら担当さんが「それいいですね!」と食い付いてきた。 さらに、



相手が女の子で、レズがらみはどうだろう!?



というと、担当さんは、さらに食い付いてきた(笑)。


で、レズと並ぶ形で、担当さんが以前から「読みたい、読みたい」と言っていた、秀ジィの「旧制高校時代のエピ」を入れることにしたのだ。



ひいおじいちゃん夫妻のエピソードは、突然「入れよう!」と思った部分だが、征士郎と琴美の出会いのエピソードは、実話がベースになっている


これは、私の英語学校時代の聖書の先生、K神父が体験した話。




K神父が若かりし頃、外国へ行くには、まだ船に乗らねばならなかった時代だった。
イギリスに行く船の中で、K神父は一人の日本人女性と出会う。 彼女は、イギリスで待っている恋人に会いに行くところだった。
当時、日本人女性とイギリス人男性の恋など、考えられない時代だったので、K神父はとても印象に残ったという。
女性の幸せを祈りつつ、何かあったら自分のもとを訪ねてくるように言って、神父はイギリスで女性と別れた。

その後、神父の元を訪ねてきた女性は、うちひしがれていた。 約束の場に、男性は来なかったのだ。
だまされたかも知れないが、帰りの旅費もないので、イギリスで働くと女性は言った。神父は、これからも力になると告げた。

そのまたしばらく後、ある雨の日。女性が歩いていて、ふと傘を上げると、そこに、偶然に件の男性がいた。 その時、すべての誤解が解けた。

名家の生まれの男性の家族は、日本人女性との恋を良く思っておらず、男性に届く女性からの手紙を隠していたのだ。 だから、女性がイギリスに来ることを、男性は知らなかった。

「私たち、アメリカへ行きます」と、二人揃って訪ねて来た時はとても嬉しかったと、K神父は言った。

それから数年は、二人はアメリカで幸せに暮らしていたらしい。しかし、ある日、K神父のもとに届いた男性からの手紙には、「妻が亡くなりました」としたためられていた。

アメリカ、ビキニ諸島での原爆実験。彼女は、そこで被爆してしまったのだ。 最後まで、波瀾万丈の人生だった。



この話を授業中に話してくれたK神父も、湾岸戦争の折、イランに行く途中の飛行機が砂漠に墜落したり(神父は無事だった)、イギリスでは、エリザベス女王よりも身分が高かったり、波瀾万丈の人だった。




秀ジィの旧制高校時代のエピを書くにあたり、木原敏江の傑作漫画『摩利と新吾』を参考にした(つーか、漫画で参考にするとなるとアレしかないというか)。


『摩利と新吾』をパクっている


という書き込みとかクレーム期待(笑)



でも、実際の旧制高校の生活は、事実あの通りだったらしいから。「ストーム」もしかり。うっかり「摩利の新吾の丸パクリだよね。ストームとか」と、ブログや掲示板に書き込んで恥を掻かないよう気をつけてくれ。



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