「黒沼 香月日輪のこわい話」



新潮文庫から『下町不思議町物語』が出た時、それまで、『下町〜』のような、若い読者向けの本を出したことのない新潮文庫は、客の反応(どういう客が、どれぐらい買うか、ということ)が読めなかったらしい。 

なので、まず書店の



「えっ、香月日輪の本が新潮文庫から出るんですかっ!? Σ(゚◇゚;) 

もっと配本して下さい!!


という反応に驚いた。

さらに、あっという間に「重版」を重ねることに驚き、「初版数を間違っていたと、営業も謝罪していました。申し訳ありません」と、担当さんに言われた。

担当さんは、口をきいたこともないような会社の幹部に廊下で腕をとられ、



「香月日輪は、他にも本を書いてくれるのかっ!? あと、連載とかはしてくれんのかっ!?」


と、言われたらしい(笑)。



というようなことがあって。




担当さんから



「なんでもいいから、とにかく今すぐ原稿を下さいっっ!!!」



と、懇願されたのである。

「なんでもいいと言われても、手持ちのものは、サイトに上がってるSSぐらいしか……」



「それでいいですっっ!!!」



ということで、「短編集」を作ることになったのだ。


「短編集」を作るにあたり、新潮文庫は、ポプラ社にまだ版権が残っている、香月日輪の短編集『この先、危険区域』を強引に引き上げた(契約切れを待たずに、ポプラ社に、契約切れまでロイヤリティを払ってでも、版権を引き上げたのである。ちなみに、ポプラ社のロイヤリティって高いらしい)。

『この先、危険区域』の児童向けのこわい話と、サイトに上がっていた、大人向けのこわい話(含む”黒沼”)を足したら、立派なページ数になる。
以前、令丈先生が「サイトに上がっているSSも本にまとめてほしい」と言っていたし、私としても、気まぐれで書いていたSSが、ちゃんと本になるのは願ったりであった。 しかも、アマチュア声優サークルで作ったドラマCD用の『春 茶屋の窓辺にて候』も収録してくれるとは!
これは、もともとがドラマCD用の脚本だし、別にこわい話でもないので「収録しなくてもいいのでは?」と担当さんに言ったのだが、担当さんは「いえ、入れましょう!」と言ってくれたので、作品の形態はだいぶ違うが、収録された。 ごっちゃんです。

公式に上がっていたSSなどは、『桃吾の森』も徳間に引き上げられたので、これですべて本に収録されたことになり、公式サイトからは「小説の部屋」そのものが無くなってしまった。 ファンから「久々に黒沼を読もうとしたら、小説の部屋が無くなっていました。どうしてでしょう?」とメールがきたばくしょうぅぅぅ。 ちゃんとした本になったから、お買い上げ下さい。よろしく。



これらWeb小説が、正式な本になるにあたり、ほんのちょこっとだけ書き直したりしている。
特に「黒沼」は、徳間書店から出る「桜大の不思議の森」と関連しているので、あらためてそれ仕様にした。


『黒沼 香月日輪のこわい話』(新潮社)は、ぜひ

『桜大の不思議の森』(徳間書店)とあわせてお楽しみ下さい(CM)



「この先 危険区域」…… ずいぶん古い作品だが、自分で読んでも、結構容赦なく怖い(笑)。 これを子ども向けに発表できて良かったが、今度は一般向けに発表できて、さらに嬉しいと思う。

「譚の部屋」…… 作家を目指していた友人が、学生時代に書いていた小説の文体に憧れてて、私もこんな風に書けたらなぁと思い、チャレンジしたのが、このSSたち。 私にはSSしか書けなかったが、それでも、わりと憧れの文体というか、風味に近いものが書けたと思うのでお気に入りである。

「春 茶屋の窓辺にて候」…… 時代劇にラテンミュージックって、どうして合うんだろう? 「鬼平〜」といい、「必殺仕事人」といい。 ということで、この作品も、ぜひジプキンをBGMに読んでもらいたい。 「鬼平〜」でも使われた「インスピレーション」とか「ウン・アモール」「パッション」など、哀愁ただようバラードがいい。



      




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