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・・・感動した番組 アッテンボローのSATOYAMA(BS11 8/22放送分)


アッテンボローが、日本の琵琶湖周辺の「里山」に焦点をあてて、その1年を追ったドキュメンタリー 番組である。

棚田、雑木林、田んぼに生きる生き物たち、移りゆく四季の風景を、アッテンボローらしく美しく、 ドラマチックに、そしてきめこまやかに撮った素晴らしい作品だった。

冬の間乾いていた棚田に春になって山水が入れられ、耕され、稲が植えられ、「田んぼ」になってゆく 様子を、私は初めて見た。それは、感動的な映像だった。

どうして、これを「外国人が撮ったフィルム」で見るのだろう?



「当事者」というのは、案外自分のことはわかっていないものである。
日本のテレビ局は、田んぼのことなど気にもとめていないのだろう。



アッテンボローは、里山の自然が、日本と日本人の自然と暮らしの原点であるという。
山からの水が田畑を潤し、川を下り海へそそぐ。
人は雑木林を育て、そこから恵みを分けてもらい、たくさんの命と共存している。



今の日本人のどれぐらいが、このことをわかっているだろうか?



アッテンボローはいつものように巧みなカメラワークで、そのことをドラマチックに見せてくれた。
例えば、田んぼの水から顔を出したカエルの絵が手前にあり、その背景にあぜ道をゆく農夫の姿がある、 とか。
見渡す限り冬枯れで、雪の降りしきる風景の中、田んぼの脇の農具小屋の窓枠に、モンシロ蝶のサナギが 春をじっと待っている姿、とか。
私たちのすぐ側に、私たちとともに自然があるのだということを、感動的な映像でもって見せてくれた。

それは、泣きたくなるほど美しい映像だった。




デビッド・アッテンボローは、イギリスBBC放送のドキュメンタリープロデューサー。自然科学ものを 撮らせれば世界一の腕利きである。彼が撮る番組は、どれもこれも超一級に面白いものばかりだ。

彼の番組の魅力は、なんといってもその斬新な映像である。巧みなカメラワーク、ドラマチックな構成。
彼の作品を知った後では、ありきたりの動物紹介番組なんぞ、もう見られたものじゃない。


動物、自然番組が大好きな私だが、それでも好みがある。虫、海洋生物、植物などは大好きだが、 鳥やメジャーな動物、たとえば猿や像などはあまり見る気がしない。そそられないのだ。

だが、それがアッテンボロー・プロデュースなら話は別だ。どんなに面白い映像を見せてくれるのだろうと ワクワクする!
実際、先ごろ放映されたアッテンボローの「鳥の世界」は、期待にたがわぬ面白さだった。 鳥の特集を、あんなに面白く見たのは初めてだ。あれが「NHK制作」じゃ、見る気がしない。

ドキュメンタリー部門ではなかなか頑張っているNHKだが、動物ものとなると、そこに「子どもが見る」 という浅はかな考えが働くようで、つくりがとたんにチャチイくなるのが否めない。
ひところ、月曜日夜8時枠の動物ものも、まるでアホの子に話すようなナレーションが聞くに堪えなくて、 これが「科学ものと言えるのか!」と腹が立って仕方なかった。今はちょっとマシになっているが。

NHKといえば、「世界初のガラパゴス諸島からの生中継!」と銘打った番組を作り、どんなスゴイ 映像を放映してくれるのだろうと期待したのに、海イグアナが集まった海岸の岩場のワンショットだけ いう、なんともお粗末なことをしでかしたくれたことがあった。

考えてみれば、ガラパゴスでは人間の移動に厳しい規制がかけらているので、あちこちを生中継する なんてことは不可能なのである。
だったら、あんな大々的に「生中継〜〜〜!!」なんて、しなくていいのではないか??
2時間ぐらいの特番の中で、ガラパゴスからの中継はず〜〜〜っと、その同じ場面ばかり。それに なんの意味があるのだろう? 

ガラパゴスからの「初の生中継」に重きをおいているのなら、 それははなはだしい勘違いなのではないか??

番組の役目は、ガラパゴス諸島の自然と動物の様子を伝えることであって、初の生中継ではないだろう。
そんなところに予算を使うなよ!! 我々の税金を!!!!!



何が言いたいのかというと、アッテンボローの番組作りの姿勢は、このNHKの姿勢とは「対極にある」 ということである。

アッテンボローは世界中どこへでも出かけてゆく。50分番組の中で、 北極から南極までを網羅するのである。
そして、例えば「鳥」の番組なら、その土地土地の鳥たちの生態を、 この土地ではこう、この土地ではこう、という風に特徴付けて見せてくれる。
しかも、ただ学術的にではなく、とてもドラマチックに見せるのである。鳥の目線で、とか! 1羽の 鳥に密着して、とか!

なぜそんな撮り方ができるのかというと、彼らは番組作りに「時間と手間をかける」のである。実に わかりやすい。

これは、アッテンボローとは別の番組の話だが、砂漠にすむリスに似た「ミーア・キャット」という 可愛い動物がいて、これの生態を追った番組だったが、スタッフはなんと3年がかりで番組を作ったのだ。
というのも、まずは自分たちが取材するミーア・キャットの家族と「仲良しになる」ところから始めた からだ。仲良しになれば、彼らの自然な姿をつぶさに、そして大胆に観察できるからである。
取材スタッフと仲良くなったミーア・キャットたちは、スタッフのすぐ横でくつろぎ、時にはスタッフの 足の間で遊んだり居眠りをしたりして、彼らのふだんの生態をあますところなく見せてくれた。
初めてこの映像を見た私は、外国のドキュメンタリー制作のやり方に 心底驚いたものだ。「なんとすごいことをするものだなあ」と。

もちろん、動物の中には仲良くなれないものもいるから、いつでもこういうやり方をしているわけではない が、特に動物、自然もののドキュメンタリー部門においては、対象物への「考察」と、 時間と手間は惜しまないことと、映像を見せる「センス」という点では、日本は欧米に遥かに 水をあけられている気がする。




ビデオレンタルショップへ行ったら、ドキュメンタリーのコーナーで「アッテンボローの〜」とついた 動物、自然ものを探して見てみるといい。 きっと、見たこともない映像が見れると思う。





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