おもにエッセイが好きだ!!





☆ 澁澤龍彦 「東西不思議物語」「夢の宇宙誌」(河出文庫)他

    長〜〜〜〜〜〜〜〜い間活字から離れていた私が、ポツリポツリと活字を読み始めた矢先に出会ったのが 澁澤さんの「東西不思議物語」だ。タイトルに惹かれて何気なく手にとったのが運命の出会いだった。
   華麗にして流麗! 格調高い文体と万華鏡のように美しくちりばめられた知識。 まさに博覧強記。趣味がピッタリ合うこともあって、澁澤さんは私をたちまち活字の世界へ引きずり込んで くれた。この後に続く「黒魔術の手帖」「毒薬の手帖」そして、傑作「夢の宇宙誌」など。その造詣の深さで 、どれだけ私の世界を広げてくれたことか!  感謝をこめて、澁澤ファンの友人とともに毎年鎌倉にあるお墓参りに行ってます。
   一度、お墓の掃除にいらしていた澁澤夫人にお会いする光栄に浴し、その際に 澁澤さんの存在が、私が小説をかく原動力の一つであることを伝えることができて大変嬉しかったことを 思い出す。
   魔術、文学、シュールレアリズムなど、造詣の深さは底知れないが、 ボタニカル・アートを挿絵に、花を語った「フローラ逍遥」(平凡社)は、美しい花の絵とそれにまつわる 澁澤話が教養を高めてくれるようで、とってもお得な気がする(笑)。

   「ナポレオンの皇后ジョゼフィーヌは、マルメゾンに260種もの薔薇を集めた そうだよ。ヨーロッパの人たちは本当に薔薇が好きだよねえ。シャルダン、ロンサーヌ、キリスト教も 魔術も王族も、薔薇の紋章をこよなく愛した。 だけど私は、蕪村が「愁いつつ 岡にのぼれば花いばら」 と詠んだ、日本の素朴な野薔薇の方が好きだなあ」

   なんて   サラリと言ってまわりを引かせたい  (笑)



☆ 野田知佑 「魚眼漫遊大雑記」(新潮文庫)他

    エッセイストでカヌーイストで「カヌー犬」ガクの父ちゃん。
   野田さんとの出会いも、たまたまだった。タイトルに惹かれたんだと思う。私は インドア派だが、アウトドアは嫌いじゃない。野外でバーベキューなんてワクワクしてしまう。
   「魚眼漫遊大雑記」は、野田さんが世界を渡り歩いた旅行記。私が、そして おそらく大半のフツーの人も、多分一生行くこともないようなギリシャの果ての海岸とか、アフリカの片田舎 とか、あるいはセーヌの橋の下とかを、おもに釣りをしながら通り過ぎ、そこでの子どもとかオバチャンとか 浮浪者との交流などが描かれている。
   スペインでは山賊に会い、アフリカのホテルでは14人もの給仕に囲まれカチン コチンになって食事をし、崩壊前のモスクワで勝手に魚を獲って逮捕されたりする。
   当時、ちまちまとバイト生活を送っていた私は、この本を読んで「私はここで一体 何をしているのだろう」と呆然とした。もし私が男だったら、すぐにでもすべてを捨てて出奔してしまい そうな……そんな衝動にかられたものだ。
   野田さんのような旅はできないにしても、こんな風に世界中を歩けたらなあ……と、 痛感する。何にも縛られず、ただ酒と本を持って。愛犬をお供に。
   文学に造詣の深い野田さんの文章は、奔放で面白く、かつ硬派な格調高さがある。 文学作品なんて一生読まないであろう私は、こういうところからニーチェの言葉などを仕入れさせてもらう のだ(笑)。



☆ 椎名誠 「哀愁の町に霧が降るのだ」(新潮文庫)他

    小説家、エッセイスト、編集者、冒険家、そして「あやしい探検隊」隊長として超メジャー。いまや 絶滅危惧種に指定された昔ながらの硬派の男(笑)。
   椎名さんの講演には、若い女がつめかけているらしい。
   男女平等が声高に叫ばれ、 バカフェミニストどもの「女よ強くなれ!」のカン違いスローガンに、まンまとのせられたバカ女どもが バカ男どもを尻にひき、バカマスコミがそれを煽り、男どもがすっかり腑抜けになって久しい。だがやはり、 女は「強い男」「男らしい男」に惹かれるのだ。それは本能だろう。
   バカ男どもよ、バカ女とバカマスコミに振り回されて己を見失うな!!  「あやしい探検隊」のドレイになって修行して来―――い!!!
   ……実際、ドレイにしてくれという男どもが多いらしい。男ども自身が 「男らしい男」に飢えているのだなあ。
   さて。私の中の椎名さんといえば、バカエッセイ。パワーあふれるタワゴトである。
   その椎名さん自身の若き日々をつづった私小説「哀愁の町に霧が降るのだ」は、 小説とはいえチャプターが細かく分かれていて読みやすく、椎名さんとその仲間たちの織り成す人間模様が 面白くてサクサク読めてしまった。
   時代、ということもあるのだろうが、若い力を持て余しつつ、怠惰で 一途で、真面目で不真面目で、バカで、ちょっぴり哀しい男たちの日々が微笑ましく、ジンとくる。 今どきの若者たちはこれほど純ではないだろうが、それでもきっと根底にあるものは変わらないはずだ。 そう願いたい。これを読むと「男っていいなあ」とつくづく思う。女同士では、とても こんな友情は育めないだろう。
   椎名さんの私小説は、他にも「哀愁の〜」のその後編とか、社会人編とか、息子 岳くんの成長を描いた「岳物語」(集英社)とかがあるが、どれも面白い。私のお薦めはこの私小説。 バカエッセィはパワーがありすぎて好き嫌いが分かれるかも。椎名さん自身が好きなSFは、 読めないのでわかりません(笑)。



☆ 開高健 「開口閉口」(新潮文庫)「オーパ!」(集英社)

   現代日本文学界の至宝。酒と釣りと美味いものをこよなく愛し、鬱の闇を彷徨い ながらもユーモア溢れる奥深いオッチャン。
   私はもちろん、開高さんの高尚な文学は読めない(もちろんっていうな/笑)。 けれどエッセイは好きだ〜〜〜〜〜!!!!! 流麗で高尚な文体が、活字を音でとらえる私の耳と魂を 震わせる! あふれる教養に唸り、軽妙なユーモアに笑い、華麗な文体にうっとり。
   「開口閉口」は今のところ私の中での最高傑作。読めば読むほど頭が良くなる 気がする。これを古本屋で200円で手に入れたのだから、古本屋恐るべし〜〜〜!
   「オーパ!」シリーズなど、世界各国への釣行を描いた本も数多い。釣りは全く 知らなくても十分に楽しめる。開高さんと仲間たちの珍道中であり、美味そうな食べ物がワンサカ 出てきて、異国の街角に立つような旅情が味わえるから。そこにある光と影も。
   このように、世界各国さまざまな人と自然と街と時代を生き抜いてきた健オイチャン であればこそ、若者はオイチャンに何か言ってもらいたくなるもので。「風に訊け」(集英社)は、そんな オイチャンと若者の問答書である。君が何かに迷っている若者なら、ぜひ一読あれ。参考になったりならな かったり(笑)。




次は「怖い本」だ!
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